片思いには、種類がある。

「片思い日記」で大好きだった彼をいつまでも長々と想ってしまうのは、きっと理由がある。
原因だと言い換えてもいい。

その理由。その原因。
「彼と私」ここだけ見ていれば済んだから。
自分に都合のいいことづくしの恋だったから。
だから。
いつまでも懐かしく戻りたい場所であり続けてしまう。

彼には奥さんも娘さんもいて、彼は「父で夫」の役を、不満なくきっと幸せに喜んで引き受けている。

私が出会ったとき、既に彼はそういう状況だったから。

そしてふたりでいる時。

結婚生活を送るうえで適切な女性を選んだことを明言していたから。

つまり。
私は「ライバル」を持たない恋をしていた。
彼が私に恋してくれないか、それだけを考えて彼だけを見つめていればそれでよかった。

これはすごく、楽なこと。

彼の恋する気持ちが他の誰かに向くんじゃないか。
知らない誰かが、今日は彼と彼のお気に入りの和食に出かけるんじゃないか。
彼が今日お気に入りのネクタイをしてきたのは、知らない誰かとふたりで出かけるからなんじゃないか。

そんな、私の得意な妄想を、自分をすり減らす妄想を。
封印できた恋だった。

だから、おしゃれになったり、明るくなったり、仕事で頑張ってみたり。
自分にばっかり手をかけることができた。
次の日仕事に行けないことなんて、なかった。

もしかして。
彼にだって誰かに恋する気持ちがあって、残業のあとその彼女に会って帰ることだってあるのかもしれない。

だけど、それを完璧に隠しとおす人で。
完璧ではなかったとしても。
私の拙い「女の勘」は、それをまったく察知しなかった。

だから、存在するかもしれないけれど、私の中では存在しなかった。

これはやっぱり楽なこと。

私の片思いは、私の我侭のうえで、くるくる回っていただけなのかもしれない。
彼は、それを見抜いていたのかもしれない。

だから彼はあの夜
「若いから、そういうふうに言えるんだよ」
そう、苦笑したんだろう。

恋って、あらゆるものを包含する人間関係なのに。
私にはそれができない。

だから私は、いま恋が怖い。

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