時間外。
残業中。
彼はまだ出張から戻らない。
若手が少し残るオフィス。
電話が鳴る。

私がとる。
うちのプロジェクトの人宛ての電話。

残念ながらその人は帰宅後。
丁寧に事情を説明し、ご理解いただく。

彼女は焦っていた。
焦っていても、責任もって話を受けられるのは、その人だけ。
彼女はくいさがる。

「帰ったんですか?」
「ハイ。そうなんです…」
「もう?」
「ハイ。今日は…」
「あ、そう。悲しいわ。それにしても、大手は17時すぎると帰れるのね。エリートでいい仕事ですね」。

揶揄するような。
皮肉をたっぷりこめた言葉。
こういうことは、よくある。
いつもの私なら頭に来ても怒らない。
そういうふうに訓練されている。
怒ったら負け、な場面が多いから。
いい関係を築いていくなかで、
「あの時は…」
と謝ってくださる方もいる。

だけど今日は事情が違う。
「そんなことはないですよ」
即座に、低くて強い声が出た。
自分でも驚いたけど(笑)。

だって。
ここで笑って受け流したら、彼女の言い分を認めたことになる。
それは絶対したくなかった。
みんな、ラクな仕事なんてしてない。
自分の仕事以外に、突然増える仕事に対応することもある。
急なお客さまに膨大な資料を作らなければいけないこともある。
確かに。
お局みたいに、残業を勘違いしている人もいる。
だけど。
私の大好きな男の人みたいに、なんとか自分のバランスをとりながら、できるだけ仕事に穴を開けまいと頑張る人が大半。

「私どもは皆真剣に業務に取り組んでおります。時間外に●●が不在だったことで、そのような言い方をされて、おたくさま同様私も残念です」

口調はやわらかに、声のトーンも普段に戻して。
けど、いつもの応対では決して忘れない笑顔は、あえて消した。
そんなことは、電話の向こうには見えない。苛立っている彼女なら、なおさら気付かないかもしれない。

そりゃ、彼女も自分の思い通りにことが運ばなくて感情的になっていたんだろう。
だけど、仕事をラクだと思われたら、みんなの頑張りが報われない。

すごく悔しかった。

こちらに落ち度がないことなのに。
言いがかりをつけられること。
それだけならまだしも。
こちらの仕事ぶりを否定されること。

このことに私はまだ、慣れない。

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